宛先は天国ですか?
エピローグ




***


もうすぐに迫った最後の病院実習。

長いそれを乗り切れば、あとは2月の国家試験だ。

実習に向けた勉強を進め、それからまた別のことをし始める。


久しぶりに、両親に手紙が書いてみたくなったのだ。

…なんていうのは口実で、最近は電話でしか会話をしていない将太さんと、久しぶりに文通でもしたくなったのだ。

電話で声を聞くのもいいけれど、手紙だともっと、素直になれる気がして。


宛名は、知っていた。

付き合ってから、年賀状を交換するようになったから。

だけど、今日だけはなんとなく、天国の両親へと宛ててみたくなった。

ほんと、なんとなくだ。

届くわけないことも、それこそ捨てられてしまうであろうことも予想できていた。


書き終わった手紙を手に取りジッと眺めてみる。

突如、すぐ近くにおいてあった携帯がチカっと光った。

覗いてみると、将太さんから電話がきていて、マナーモードにしていたため音が鳴らなかったのだと察した。

< 297 / 302 >

この作品をシェア

pagetop