宛先は天国ですか?



それが、その言葉が、どれだけわたしにとって嬉しい言葉か知らないから。

将太さんはそんなこと知らないから、平気な顔をしてそう言うけれど。

いきなりそんなことを言われたわたしの心臓は、ドクドクとうるさく鳴って壊れてしまいそう。


「あっそう」

ムッと頬を膨らましていると、将太さんはクスクスと笑う。

それから、わたしの分のポテトをつまみ食いして、

「早く食べましょう。すっかり、冷めてしまってますし」

ふわりと微笑みまた一つつまみ食いをした。


「あ、酷い、つまみ食いしないでくださいよ」

「ふふっ、私の分は食べてしまいましたから」

「え、いつの間に…」

少しだけ壁が薄くなった感じがした。

とても話しやすくなった気がした。


まだまだ素直になれないけれど、今はこれでいいのかもしれない。

今はまだこれだけで十分なのかもしれない。

勇気を振り絞って声をかけてよかった。


ずっとずっと好きだった人が誰だか分かった。

ほんの少しの、進展。

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