宛先は天国ですか?
素直に、自分の思いをぶつけるのはどうも苦手だ。
悲しいとか楽しいとか、「そう」と流されてしまうのが怖くて。
慰めてほしいのに、笑ってほしいのに、簡単な言葉で流されてしまったら。
昔から、どんなに楽しくても、幸せでも、周りからしたら可哀想な子供でしかなかったことが、悲しくて。
「別に、勘違いしないで。
…たんなる、暇つぶしなんだから…」
余裕がなくなると口が悪くなる癖。
直さなきゃいけないのに、なかなか直らないつい出るタメ口。
誰かに自分の思いを見透かされたときに、ついつい溢れる余裕ぶった言葉。
ふいっとそっぽを向くと、ふふっという笑い声が聞こえてきた。
横目で将太さんを見ると、少しだけ困った笑みを浮かべていた。
「そうですね、でも、」
将太さんが視線を下にそらして、わたしの手元にまだある手紙を見た。
便箋を出したまま、読み終わったままにしてある手紙。
それから、優しく笑うと、
「私は、いつも楽しみにしてましたよ。
佐川さんから、お手紙が届くのを」
なんでもない顔で、さらりとそんなことを言ってのける。