宛先は天国ですか?



聖也はわたしと帰りが同じ方面で、しかも駅が2つ分、わたしのが遠いだけ。

結構近くに住んでいるらしく、行きは聖也が遅起きのためにわたし1人で登校しているが、帰りはたまに一緒に帰っている。

家が近くなんてなかなかないことだし、できることなら誰かと帰りたいし。


「うん、暇だよ」

そう答えると、聖也は「良かったぁ」と満面の笑みを浮かべる。


「今日さ、買いたい物があって、寄り道したいんだけど、付き合ってくれない?

定期内だし駅からもそう遠くないお店だからさ」

頼む、と両手を合わせてお願いしてくる聖也に、ふと微笑んだ。


…定期内で無駄な交通費がかからないなら、別に大丈夫だろう。


「構わないよ」

グッと親指を立ててそう返すと、聖也はニカッと笑みを浮かべた。

それから、さり気なくぎゅっとわたしの手を握ると、

「じゃあ放課後、よろしくな!」

それだけ言ってさっさと自分の席に戻っていった。

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