宛先は天国ですか?
わたしは黙って腕をひかれるがまま将太さんについていった。
年よりも若く見える将太さんはきっと、周りから見たらわたしのお兄さんだろう。
この年になってまで手を繋ぐ、仲のいい兄妹のように見えるだろう。
少しだけ、ギュッと手を握ってみて、それからすぐに力を抜け抜いた。
握りしめてたら、心臓がもたなさそうだ。
隣を歩くだけでも、ドキドキと緊張してしまうのに。
将太さんがつれてきてくれたのは、フードコートの中にあるアイスのお店だった。
「何味がいいですか?」
そう言いながら財布を取り出した将太さんに、わたしは慌てて首を横に振る。
「じ、自分で買ってきますから!」
お昼ご飯代はなんとかわたしが払うことに成功したが、ここで奢ってもらっては意味がない。
なんか奢ってもらうと、ますます子供に見られてしまう気がして嫌だ。
だけど将太さんはクスッと微笑むと、
「アイスくらい、いいですから」
買いに行こうとするわたしの腕を掴んで、そう言った。
…腕を、振り払えない、振り払いたくない。
だから、仕方なく、将太さんに買ってもらうことにした。