宛先は天国ですか?



お店に並んで会計を済ます時、自然と腕が離されてなんだか寂しくなった。

“好き”と伝えたら将太さんは、どんな顔をするのかな。

少しくらいわたしを女として見てくれるのかな。


考えたところで、伝えるわけではないのだけれど。


アイスは冷たくて甘くて美味しかった。

ただ、まだほんのりと手に残る熱で溶けてしまいそうだった。


「次、どこに行きましょうか」

アイスを食べながらふにゃっと笑みを浮かべる将太さん。

「将太さんは何か、買いたい物、ないんですか?」

問いかけると、将太さんはふるふると首を横に振った。

「今のところ、ないんですよ。佐川さんは?」


…“佐川さん”、か。

距離を感じるのは当たり前のことだと思う。

いくら何年も文通をしていたとはいえ、こうして会ってからまだ1ヶ月経ってないくらいなのだから。

それも、全く知らない、12歳も年の離れた男女となれば、距離もあるだろう。

だけどわたしが将太さんと呼んでいるせいだろうか。

名字呼びに、なんだか違和感を感じた。

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