宛先は天国ですか?
「あの、」
不意に呼びかけると、将太さんは「何かあるんですか?」と首を傾げた。
わたしはそれに少し下を向いたあと、誤魔化すようにもう少しのアイスを口に押し込んだ。
熱くなった顔の温度が、徐々に下がっていくのを感じる。
不思議そうな顔をする将太さんに、わたしは口にあるものをゴクンと飲み込んだ。
「あの、名前で呼んで、くれませんか?」
真っ直ぐ、将太さんの目を見ながらそう言った。
アイスを一気に食べたせいか、頭がキーンとする。
将太さんは少しだけ驚いてから、ふと柔らかい笑みを浮かべると、
「暖々、さん」
優しく優しく、わたしの名前を呼んでくれた。
ああ、なんだかこそばゆくって、ついつい頬が緩んでしまう。
ニヤけそうなのをこらえながら、わたしはニコリと微笑んだ。
「ゲームセンターにでも、行きませんか?」
「いいですね、ゲーム下手ですが、私」
くすぐったい感じがした。
また、一歩前進。
少しずつ縮まっていく距離に、わたしの心はウキウキとしていた。
何気ない毎日が、楽しい。