肉食系御曹司の餌食になりました

そして今月の終わり頃から始まる『さっぽろホワイトイルミネーション』に合わせて、うちの企画もスタートする。

発光・蓄光板ガラスを組み合わせ、小路やチャペルふうステージを作り、ここは幻想的な空間に変化する予定。

結婚式はクリスマスイブの夜、一回のみだけど、一月上旬まで展示は続く。


「それでは図面通りでいいですね。二十日から工事に入りますんで、麻宮さん、よろしくお願いします」


そう言って支社長に頭を下げたのは、会場作りを依頼している施工業者の責任者。

作業服を着た四十代くらいの男性だ。


「こちらこそ、よろしくお願い致します。では、我々はこれで失礼させていただきます」


施工業者との現場での最終打ち合わせが終わり、私達は大通公園を出てビルの谷間を歩く。

ここから会社までは徒歩十分ほどで、営業車は使用せずに歩いてきた。

時刻はもうすぐ十二時になるというところ。

私の歩調に合わせて歩いてくれる支社長が、「ラーメンを食べてから社に戻りませんか?」と誘ってきた。


ラーメンか……。

智恵とふたりだと選ばない選択肢だが、今は私もラーメン気分になっている。

寒いときには温かいものが欲しくなるし、すぐ側のビルの前に、ラーメン屋の幟が出ているからだ。

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