サヨナラの行方
「亜耶乃が小さい時なので、亜耶乃はこの事実を知りません。今はもう、不倫相手とは連絡も取っていません」
「まさか、常務にそんな過去があるとは……」
もう、なんて言っていいのか分からなかった。
離婚したいと事実を告げて、怒鳴られるとばかり思っていたのに。
まさか、不倫をしていたと返ってくるとは思わなかった。
「だから本来、何も言える立場ではありません。しかも、みなさんの前でしてしまったばかりに亡くなってしまうなんて……。
亜耶乃に言われた時に、もっと強く反対すればこんなことにはならなかったはずです。痛みは誰よりも分かっていたはずなのに……。
本当に、申し訳ありません」
深く頭を下げて謝られた。
そこまでされるとは思っていなくて、こっちが慌ててしまう。
「常務、顔を上げて下さい。元々、悪いのは僕の方ですから」