サヨナラの行方



「ゆうちゃん、先行ってるよー。ゆっくりでいいからね」


「はーい。ありがとう」



急に、そんな声が聞こえた。

人がいたから、悠月の家を聞こう。

…………そんな考えはすっ飛んでいた。

考えるよりも何よりも、その声に反応した。

聞き覚えのある声だったから。

でも、そんなはずがない。


確かめたいけど、足が動かない。

そのうち、1人の女性が出てきた。

少しだけ、周りに目を配りつつ、足早に去っていく。


その子、ではない。

やっぱり、聞き間違いか?

でも、間違える訳がない。

いなくなるまでずっと、間近で聞いてきた声だ。

何度も話した。

仕事でもプライベートでも。

誰よりも近くで聞いてきたと思う。

そんな声を、聞き間違える訳がない。




< 169 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop