サヨナラの行方
「ゆうちゃん、先行ってるよー。ゆっくりでいいからね」
「はーい。ありがとう」
急に、そんな声が聞こえた。
人がいたから、悠月の家を聞こう。
…………そんな考えはすっ飛んでいた。
考えるよりも何よりも、その声に反応した。
聞き覚えのある声だったから。
でも、そんなはずがない。
確かめたいけど、足が動かない。
そのうち、1人の女性が出てきた。
少しだけ、周りに目を配りつつ、足早に去っていく。
その子、ではない。
やっぱり、聞き間違いか?
でも、間違える訳がない。
いなくなるまでずっと、間近で聞いてきた声だ。
何度も話した。
仕事でもプライベートでも。
誰よりも近くで聞いてきたと思う。
そんな声を、聞き間違える訳がない。