サヨナラの行方
何が本当で何が嘘なのか、分からなくなる。
頭の中が混乱してきた。
足が動かなくて呆然と立ち尽くしている俺の前に、同じ家からもう1人出てきた。
その子は、前の子より周りに気を配りキョロキョロしていた。
その時に目が合い、息が止まりそうになった。
おそらく、それはお互いだったはずだ。
目が合ったあと、一つも声を出さず、でも目をそらすこともしない。
目を見開いて驚いていた。
「………………か、課長……?」
そんな中、先に言葉を発したのは彼女だった。
彼女の方も、俺がここにいるのが信じられないようだった。
でも、それ以上に驚いたのは俺の方だったと思う。
「悠月…………」
うわ言のように名前を呟くのが精一杯で、それ以上何も言えなかった。