サヨナラの行方
「澤村さん、ごめん。この前言ったヤツ、出来てる?」
「あ、来月の企画書ですね。出来てます」
デスクの上の書類から一つ抜き出し、和泉課長に渡す。
「すみません、出すのが遅くなってしまって」
「イヤ、まだ余裕があるから平気だけど……」
不自然に課長の言葉が止まる。
私は首を傾げながら課長を見ると、優しく笑った。
「出来るようになったな。2年前までとは大違いだ」
そんなことを耳元で囁いたあと、書類を持って立ち去る。
私はすぐに我に返って、座ってパソコンの影に顔を隠す。
……油断した。
顔に出ていないだろうか。
あんなに近づいてきたのは久しぶりだったから。
未だに心臓がバクバクいっている。