サヨナラの行方



その表情を見ると、昔に戻ったみたいでいたずらしたくなってくる。

じっと彼女を見つめ、そっと唇に触れる。

指で触れただけなのに、相変わらず柔らかかった。

その行為に、彼女は固まったまま動かない。

それをいいことに、俺は手を動かす。

唇から頬へ動かし、そっと撫でる。

それから、首をそって下へ降りていく。

そこでようやく我に返った彼女の手が、俺の手を掴んで止める。



「だから、何をやっているんですかっ」



顔を真っ赤にして怒るものだから、迫力はない。

それどころか、可愛く見える。

俺はどこかおかしいのかもしれない。

手が止まらない。

彼女の手をそっと離して、腰の方へ移動する。

それでもなお、彼女の手は俺を止めようとする。

けど、俺の手が体に触れるたび、ビクンと反応するものだから、その手も意味をなさない。




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