全力片思い
近づくたびに緊張が増していく。

いつもは普通に話し掛けることができるのに。

泣いているカレに伝えたい想いがたくさんあるのに。


なのに声が出ない。
言葉が浮かばない。


次第に歩幅が小さくなっていく。
それでも近付いていき、カレとの距離三十センチの場所で足を止めた。


カレは私の存在にいまだに気づいておらず、顔を埋めたまま泣いている。

咄嗟に手が出そうになったのを引っ込めた。


なにやっているんだろう、私。頭を撫でようとするなんて。


でもそうしたくなるくらい、今のカレは弱り切っている。

『違うよ、あんたのせいじゃない。頑張ったよ』

言いたいのに言えない。
そんな慰めの言葉なんて、望んでいないと思うから。
< 3 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop