全力片思い
柳瀬は恋愛にまるっきり興味がなさそうだった。

それよりも友達と過ごす時間が楽しいって言っちゃう奴だったから。


そんな柳瀬に「好き」って言っても私の気持ちは届くはずないし、むしろ気まずくなり話せなくなるのが怖かった。


それならいっそ、友達のままそばにいられればいいと思った。

一番近くでカレの笑顔を見ることができればいいと。

みんなで遊ぶとき、必ず私を誘ってくれた。

ひとりでいると声を掛けてくれた。

くだらないことでふざけ合って笑い合った。

週番のたびに、右端の黒板に日付と曜日。そして柳瀬と私の名前が書かれている。それだけで充分幸せだった。

些細な幸せに満足して、なにもできなかった中学時代。

それは高校生になっても変わらなかったんだ。


* * *


「私……間違っていたのかもしれない」

アルバムに写る自分と柳瀬を指で撫でる。

今の関係を壊したくない。柳瀬と話せなくなるのが嫌とか、そばにいられなくなるのが怖いとか。理由ばかり並べていた。
< 81 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop