たったひとつの恋をください
「そうなんだあ。あたしはね、課題を机に置きっぱなしだったから、取りに来たんだ」
「あれ?蓮が持っていかなかった?」
「荷物は持って来てくれたんだわけどね、プリントがないことに後で気づいてー」
琴里は自分の席を覗き込んで、あったあった、と笑う。
「……そんなの、明日でもよかったのに。今日は安静にしてないと」
「ううん。もう大丈夫だから。心配かけてごめんね、ほんと」
朗らかなその笑顔に、さっきの蒼白な表情は微塵も残ってなくて。
それもきっと蓮のおかげなんだなって思ったら、やっぱり少しだけ、複雑な気持ちになってしまった。