たったひとつの恋をください
だけど私が何か言う前に、蓮があっさりその答えを教えてくれた。
「ケーキ」
「は?……け、ケーキ?」
予想もしなかった言葉に、私はキョトンとして訊き返す。
「うん。今、ケーキおいしいーって言ってたじゃん。寝言で」
「え、嘘っ!?」
そんな食いしん坊な夢見てたの、私!?
「ほんとほんと。それはもう幸せそうに。って言ってたら、ケーキ食いたくなってきたな」
「………」
夢の中でまでケーキって。いくらなんでも色気なさすぎでしょ。
まともに落ち込む私とは裏腹に、蓮がケラケラと笑い転げる。
「まあそう落ち込むなって。ケーキを目標に頑張ろうぜ」
「……それも私のオゴリでしょ?」
でも、なんだ、ケーキか。びっくりした。好きだよ、なんて、いきなり言うから。
夢の記憶はいつも曖昧で、いつも目が覚めれば内容なんて忘れてしまうけれど。
でも、夢の中で自分が言ったことだけは、なんとなく覚えていた。
ーー大好きって。
だから、返事をくれたのかなんて、一瞬、勘違いをしてしまったんだ。
……そんなはず、ないのにね。