たったひとつの恋をください





だけど私が何か言う前に、蓮があっさりその答えを教えてくれた。


「ケーキ」


「は?……け、ケーキ?」


予想もしなかった言葉に、私はキョトンとして訊き返す。


「うん。今、ケーキおいしいーって言ってたじゃん。寝言で」


「え、嘘っ!?」


そんな食いしん坊な夢見てたの、私!?


「ほんとほんと。それはもう幸せそうに。って言ってたら、ケーキ食いたくなってきたな」


「………」


夢の中でまでケーキって。いくらなんでも色気なさすぎでしょ。


まともに落ち込む私とは裏腹に、蓮がケラケラと笑い転げる。


「まあそう落ち込むなって。ケーキを目標に頑張ろうぜ」


「……それも私のオゴリでしょ?」


でも、なんだ、ケーキか。びっくりした。好きだよ、なんて、いきなり言うから。


夢の記憶はいつも曖昧で、いつも目が覚めれば内容なんて忘れてしまうけれど。


でも、夢の中で自分が言ったことだけは、なんとなく覚えていた。



ーー大好きって。



だから、返事をくれたのかなんて、一瞬、勘違いをしてしまったんだ。


……そんなはず、ないのにね。





< 286 / 377 >

この作品をシェア

pagetop