たったひとつの恋をください




遠くに聴こえる運動部の声、吹奏楽の金管の音。オレンジ色に染まる教室には、カリカリとシャーペンを走らせる音だけが響いている。


目の前には君がいて。だけどこれは夢じゃないから、私はそっと、バレないように見つめることしかできない。




ーーこのまま時間が止まっちゃえばいいのに。




私がそんなこと考えてるなんて、君はきっと、思ってもみないんだろうけれど。


思うよ、心から。


幸せな時間ほど、通りすぎていくのが辛くなる。


ずっとこのままでいたいって、どうしたって願ってしまうんだ。





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