不器用男子に溺愛されて
理久くんの言葉が堪らなく嬉しくて、どうしてか私の目には暖かい雫が溜まった。
「何泣きそうになってんの」
「な、泣いてないもん」
「泣いてんじゃん」
「泣いてないよ」
私は、顔を俯けて瞼をぎゅっと閉じた。何となく、涙が堪えられたなと思ったところで瞼を開く。すると。
「みや子」
どうしたことか、理久くんが私の名前を呼んでいるような感覚に陥った。
恐らくは、理久くんが〝ミャーコ〟と呼んでいるだけなのだろうが、私には何故か「みや子」と呼んでいるように聞こえた。
「みや子」
また聞こえた理久くんの声に、私は瞼を閉じた。
私の名前を呼んでいるように聞こえるだけ。これは、幻聴のようなものだ。理久くんは私を呼んでるんじゃない。絶対に違う。そう自分に言い聞かせながら瞼を開いた私はちらりと視線を上げる。
視線を上げると、理久くんとバチリと合う視線。てっきりミャーコの方を見ていると思っていた理久くんの視線が、まっすぐ私の方に向いていたことに驚いた私は何を言うことも出来ず、ただ理久くんから外せない視線の中で響く自分の胸の鼓動を聞いていた。