だから私は、明日のきみを描く
そして遥は、それからも、学校ですれ違ったりすると必ず目を合わせて微笑んでくれて、

近くを通ったときには『おはよう』とか、『元気?』とか、何気なく声をかけてくれた。


教室では相変わらず一人だったけれど、遥に何か相談をしていたわけでもないけれど、

彼女とつながっているというだけで、私は不思議なほどに強く『もう一人じゃない』と確信できた。


そのころ、学校ではいじめが流行っていて、私も一度、小さな嫌がらせを立て続けに受けたことがあった。

引き出しの中に入れていた教科書がロッカーの上に置かれていたり、下駄箱の上履きが傘立てのところに移動させられていたりというものだった。

クラスで孤立していつも暗い顔をしていた私は格好のターゲットだったのだろうと思う。


これくらいの嫌がらせなら誰でも経験がある、と自分に言い聞かせていたけれど、やっぱりショックで沈んでいたら、遥が『何かあった?』と訊いてくれた。

その優しさに触れた瞬間、涙が止まらなくなって、私はそれまでのつらかったことを全て遥に吐き出した。


遥はやっぱり何も言わず、でもそれから、私のクラスにやってきて何かと世間話をしていくようになった。

すると、潮が引くように嫌がらせがなくなった。

分からないけれど、たぶん、まっすぐ明るい遥の振る舞いを見て、みんなの気持ちが浄化されたんじゃないか、と私は思っている。


しばらくすると、クラスでも少し話せる友達ができて、私は元のように学校に通えるようになった。



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