人魚姫の願い
「す‥すみません。‥以後、気をつけます。」
「ん。いい子いい子。」
そう言って須崎先輩は私の頭をポンポンとなでた。
しばらくドキドキがおさまりそうにはなさそうだ。
そうこうしてるとグラウンドとプールへと行く別れ道がやって来た。
「じゃあ‥私はこっちなので須崎先輩、ありがとうございました。」
「美凪。あんまり無理するなよ!」
「はい!ありがとうございます!」
私はやっと心臓が落ち着いてくるのを感じた。
やっぱり‥私は先輩のことが好きだ‥。
プールへと向かう角まで来たとき。
角を曲がれば大智くんが腕を組んで壁にもたれていた。
ビクゥ!!!
今度は違う意味で心臓がドキドキした。
「え‥えーっと‥だ‥大智くん‥どうしたの?こんなところで‥。」
私はこのドキドキを押さえることに必死だった。
「綾瀬ってさ‥陸上部の須崎先輩と付き合ってるの?」
これまた唐突な質問だ。
「う‥ううん。付き合ってないよ。ただ、中学が一緒だっただけだし‥。」
「へぇーそうなんだ。付き合ってないわりには随分とあいつなれなれしいね。」
大智くんは須崎先輩に敵意むき出しという感じだった。
「大智くん?」
「中途半端な気持ちなら近づかないでほしいぐらいだよ。本当‥イライラする。」
一人言みたいにボソボソというとプールの方へと戻って行った。
私の頭には疑問しか残らなかった。
これから熱い夏が始まる予感がする。