呆れるほど恋してる。
結局健には気を使ってもらい、一時間で解放してもらった。
申し訳ないと思いつつも、早く順に会いたかった。
タクシーを捕まえて、順の家の住所を告げる。
早く会いたい。
スマートフォンで連絡をすると、彼はすぐに出た。
「もしもし」
「あと少しで到着します」
「うん。待ってる」
優しい声だ。
少しだけ低くて、耳に残る心地の良い声。
「順さん……」
「ん?」
「いえ、何でもないです」
「うん」
車は二十分経たずとして彼のマンションに到着した。
下のエントランスで順は待っていた。
「これ」
タクシーの代金を順が支払う。
「ダメですよ、順さん」
「俺が呼んだんだから、このくらいさせて」
頭を撫でて押し切られると、何も言えなくなった。
彼の部屋までの道のりは身体が覚えていた。
エレベーターを上がって彼の部屋に入ると、ひどく懐かしい気持ちになった。
「ごめんね。散らかってるけど」
たくさんの現像された写真が部屋の中に散らばっていた。
優しい色使い。
彼の世界。
「きれい……」
言葉がこぼれたと言った方が正しいのだろう。
彼女が彼の本当の世界に触れた最初の瞬間だった。