シトラス・セブンデイ
「な、何を言ってるの?」
───焦った私は目の前の彼から視線を外した。たった今、私に「好きだ」と告げた彼から。
「なにって、センパイが好き、なんですけど」
そうしたら彼は不機嫌そうに、躊躇いもなくそう漏らす。きみには恥じらいっていうものがないのか!と問いたくなってしまう。
「きみ、黒瀬くん、だよね」
「……名前、なんで……」
無表情を決め込んでいた彼が、そこで初めて動揺を見せた。少し赤くなった頬を見て、うわ、っ思う。だって彼は、とてもかっこいいから。
「いや、黒瀬くんを知らない女子なんていないと思うけど……」
「そんなの、どうでもいいですけど」
黒瀬くんが、まっすぐに私を見下ろしている。180センチはあるだろう高さを見上げると、自然と顔は上を向く。
「夏センパイに知られてたことが、嬉しい」
───彼の言葉はどストレートだ。
直球ど真ん中、胸を射るような視線と言葉。それは、ずるいんじゃないの。ねえ、学校イチの王子様。