シトラス・セブンデイ

「いや、ね? そもそも、なんで黒瀬くんが私なんかのことを……ていうかなぜ名前を……」



多分、いや十中八九これは罰ゲームか何かに違いない。だってありえない。まずもって、黒瀬くんという人物が私に話しかけていることが前代未聞なのだ。

もしかしたら明日は季節外れの雪かもしれない。



「知ってますよ。宇佐美 夏 (ウサミ ナツ) センパイ。」

「いや、だからね、なんで私の名前を……」

「だから、言ったじゃないですか。センパイのことが好きなんです。信じてもらえないんですか…?」



ど、ど、どストレートにもほどがある!
シュンと肩を落とした黒瀬くんの目はまっすぐ私を見据えている。

顔が整ってるっていうのはズルい。不覚にもキュンとしてしまっている私、いやダメだ!これには絶対裏がある!


───宇佐美 夏、17歳の高校2年にて、初めて誰かに『告白』とやらをされている。


確かにこれは私の名前だ。顔が整っているわけでもなければスタイルが抜群な訳でもない。ましてや何か人から秀でるものがあるかと聞かれたら何もない。

というか。

ガサツで女子力の無い、恋愛なんてモノとはまるで無縁のオンナとはまさに私のこと。生まれてこのかた一度もそういうものに関わったことが無い。


そう、だから。


今目の前にいる、黒瀬くん───もとい、学校イチの王子様と呼ばれるほど容姿の整った彼───が、私に告白などあるわけが無いのである。



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