クールな公爵様のゆゆしき恋情

ラウラの結婚

アレクセイ様との、とても濃い再会から一月後。

私はフェルザー公爵領へ旅立つ為、アンテス城の広場に居ました。

家族とお城で働く皆さんが温かく見送って下さいます。

家族への挨拶は昨夜済ませていますが、お母様は未だに心配な様で、小言が止まる事が有りません。

「良いですか? フェルザー公爵領に着いたら土いじりは程々にするのですよ? あなたは公爵夫人になるのですから、自覚を持ってしっかりとするのです。今までの様にぼんやりと過す訳にはいきませんよ。それから刺繍は根をつめすぎない様に。今の様に寝ないで作品作りなどしていたら肌に良く有りませんからね」

長々と続くお話に辟易としていると、お兄様がからかう様な口調で、話に割って入って来ました。

「母上、心配しなくても大丈夫です。フェルザー公爵に嫁いだら、寝ないで刺繍をやってる暇なんて有りません。そうだよな? ラウラ」

そうだよな?って言われましても……フェルザー公爵夫人の仕事は眠れない程忙しいのでしょうか?

怪訝な表情の私に、お兄様はより一層の含み笑いを浮かべて私の耳元で囁きました。

「アレクも我慢の限界だろうからな。当分ベッドから出して貰えないんじゃないか? 初夜は覚悟しておけよ」

「なっ……なんて事言うのですか⁈」

私は真っ赤になってお兄様を突き飛ばしました。
だって信じられません。とても紳士の言葉とは思えません。

「ラウラ! もういい加減落ち着きなさい!」

わなわなと震える私を、お母様が叱ります。
お兄様は知らん顔をしています。

あまりにも理不尽です。


不貞腐れる私を、お父様とグレーテとエステルが慰めてくれます。
落ち着いた私は、皆とお別れの挨拶を交わします。

「ラウラ、幸せになりなさい」
「はい。お父様ありがとうございます」

「お姉様。私達も直ぐにフェルザー領に行きますね。結婚式楽しみです」
「ありがとうグレーテ。待っていますよ」

「ラウラ。湖のお屋敷の事は心配しないでね。みんなと協力して更に発展させるわ。あそこはアンテスの観光の名所としても有用よ。がんばるわね」
「あ、ありがとうエステル。さすがですね」


皆に見送られて、私は馬車に乗り込みました。

生まれ育った大好きなアンテスを去ると思うと、寂しくなります。

ですが、フェルザー領ではアレクセイ様が待っていてくれます。

希望を持って、私はアンテス城から旅立ちました。
< 165 / 196 >

この作品をシェア

pagetop