クールな公爵様のゆゆしき恋情
「アレクセイ……お前、ラウラ姫との婚約が不本意だったんじゃないのか?」

部屋に二人きりになった途端、国王が俺の様子を窺う様に聞いて来た。

「不本意な訳がありません。俺はラウラと婚約解消なんてする気は全く無かった」

「まさかお前……ラウラ姫の事が好きなのか?」

まさかって何だよ。
幼い頃から俺にはラウラしか居ないし、これからもそのはずだったんだ。
それを勝手に婚約解消なんてしやがって!

「俺にはラウラ以外考えられません。ラウラと婚約解消する気はありません。今直ぐ撤回して下さい!」

国王はガタンと音を立てて座っていた椅子から立ち上がった。

「だったら何でラウラ姫に辛く当たってたんだ! 誰が見たってお前の態度はラウラ姫を疎ましく思っているものだった。辺境伯から婚約解消の申し入れが有っても不思議じゃない程にな」

それを言われると弱い。
俺はグッと言葉に詰まる。
その間にも国王の俺を非難する言葉が続く。

「ラウラ姫はお前の妻になる為にアンテス領からやって来た。王族になる為の教育は厳しいものだが、文句も言わずに懸命に学んでいたそうだ。それなのにお前はラウラ姫を省みず、突き放していたではないか? 社交界デビューの際のエスコートすらしなかったようだな?」

「そ、それは……」

俺にも事情が有って、言い分も有る。
だがいつの間にか俺以上に頭に血を登らせている国王は、弁解の暇さえ与えずにまくし立てて来た。

「ラウラ姫が今回の婚約解消で受けた傷は、お前と比べものにならない程大きい。ラウラ姫の身分と年頃に相応しい相手はもう皆婚約者がいるし、そもそもお前と婚約していた事は周知の事実だから、結婚相手として避けられるだろう。それでも辺境伯はお前とは結婚させたくないと言った。私は不肖の息子に代わり、辺境伯とラウラ姫に心から謝罪をした」

国王の言葉は全て本当の事だ。
俺と婚約解消したラウラの立場は、貴族令嬢としては難しいものになる。
それでも、ラウラは俺と別れたいのか?

その事実は俺を打ちのめす。
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