クールな公爵様のゆゆしき恋情
顔色を悪くする俺に、国王も落ち着きを取り戻して言う。

「辺境伯はラウラ姫の進退は気にしなくて良いと言ったが、そう言う訳にはいかない。ラウラ姫の縁談は私が考えているから、お前はもう余計な事はするな。いいな?」

「……ラウラの縁談?」

何だよそれ?

「友好国ファルティアから縁談の申し入れが来ている。我が国には未婚の姫がいないから高位貴族の令嬢が候補になるが、私はラウラ姫を推そうと思う。お前との婚約解消が噂されるベルハイムに居るより、他国で暮らした方がラウラ姫も気楽だろう。相手はファルティアの王弟だから、お前と身分も同等だ。アンテス辺境伯家の体面も保たれるだろう」

他国の王族⁈

「だ、駄目だ‼︎ その話どこまで進んでるんだ⁈」

俺は敬語も忘れて国王を怒鳴りつけた。
国王が推す候補なんてもう決定したも同然じゃないか。

「まだ何も進んでないが、アレクセイお前何を考えているんだ?」

国王が警戒する様に言う。

「……ラウラとの婚約解消は今すぐ無かった事にして下さい。ラウラは俺の妻にします」

他の男になんて絶対に渡さない。
俺以外の男があいつに触れると考えるだけで、嫉妬でどうにかなりそうだ。

だが国王は容赦ない。あっさりと断って来た。

「無理だな。辺境伯が承知しない」

そこを何とかしろよ! 国王の権力が有るんだろ?

「今回の件はどう考えてもお前が悪い。婚約解消は国王としても父親としても認めざるを得ない……それでもお前が諦められないなら、辺境伯とラウラ姫に直接謝罪して交渉しろ」

国王は息子の手助けをする気は一切無いらしい。まあいい。言う通り自分で説得した方が早そうだからな。

「……分かりました」

そう返事をし、立ち去ろうとする。ふと思い立って念を押した。

「ファルティアとラウラの縁談は無かった事に、それから俺との婚約についても内密にお願いいたします」

明日、辺境伯とラウラを訪ねよう。
そして絶対に説得してやる。



だが、翌日乗り込んだアンテス屋敷にラウラは不在。アンテス領に帰ったと言う。

婚約者のあまりに素早い行動に、俺は呆然と立ち尽くす事しか出来なかった。
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