クールな公爵様のゆゆしき恋情
翌朝になればアレクセイ様の気持ちも変わるかと期待をしていたのですが、残念ながら希通りには行きませんでした。


私はアレクセイ様に連れられ、朝早くから城下街アトレゼへ来ています。

王子のアレクセイ様は、国中に絵姿が出回っています。その為素性を知られてしまう恐れがあるので変装をしました。
黄金の髪は栗色に染めて、衣装も濃灰色の地味なものを身に付けています。
大分雰囲気は変わっていますが、堂々として気品に溢れた風格はそのままで、行きかう人の目を惹いています。

私もアレクセイ様に倣い変装をしています。
アレクセイ様程では有りませんが、辺境伯の娘である私の顔を知っている人がそれなりには居ると思いますから用心です。

アレクセイ様と同じ様に髪は栗色に染めて、街に住む女性が着る様な衣装を選びました。卵色のブラウスに、茶色の歩きやすそうなスカートです。ぱっと見ただけでは私がラウラ・アンテスだとは気づかないと思います。

私がここまで慎重になってしまうのは、アレクセイ様が護衛の同行を許さなかったからです。

つまりアレクセイ様と私の二人きりなのです。

王族が護衛としては全く役に立たないで有ろう私だけを連れて慣れない城下街に出向くなんて、有り得ないと思います。

アレクセイ様には危機感というものがないのでしょうか?

不安に苛まれ周囲を警戒する私に、アレクセイ様は機嫌良く言いました。
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