クールな公爵様のゆゆしき恋情

後悔と謝罪




結局私は全種類のお料理を頂いてしまいました。

お魚が美味しかった事も有りますが、開放的な青空の下でのお食事が思っていた以上に気持ちが良くて、つい食欲も増してしまったのです。

アレクセイ様は大食いの私をからかったりはせずに、遅いと苛立つ事も無く、私が食べ終わるのを待っていてくれました。

少し休憩をしてから広場の他のお店を一通り見て周ると、アレクセイ様は大通りに戻ると言い出しました。

「今度はどこへ行くのですか?」
「アトレゼ通りだ」

街の名前が付いた“アトレゼ通り“は、城下街の中でも高級店が集まる通りで、裕福な人々が出入りをする大きな通りです。私がドレスを頼んだマダム・ベルダのお店もアトレゼ通りの一等地に有ります。

アレクセイ様は何かお買い物をするのでしょうか。

アレクセイ様ならわざわざ店まで赴かなくても、どんな店の店主だって呼び出せると思うのですが……お店での雰囲気を楽しみたいのでしょうか。

そんな事を考えながら後を着いていく途中、私の視界に不穏な光景が映り込みました。

北の広場からアトレゼ通りへ向かう近道の途中には、脇道が多く有ります。

リュシオンに聞いた話なのですが、その奥に少し治安が悪い所が有るそうなんです。
ですからアンテスの騎士達が定期的に見回りをしていてるんだそうです。

それでも目の届かない所で危険な事が起きないとは言い切れませんから、子供や女性は一人では近付かない様にと注意がなされているそうです。

もちろん私もお兄様やリュシオンに、興味本位で近づいてはいけないと、何度も言い聞かされていたのですが……。

そんな危険な脇道に、今一人の女性が連れ去られ様としていたのです。
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