クールな公爵様のゆゆしき恋情
「助けを呼んでいては間に合わない。ラウラはここから動くな」

「でもあの人を見捨てられません!」

「大丈夫だ、俺が止めに行く」

アレクセイ様のそのお言葉に私は声を失いました。

アレクセイ様が止める?

そんな、まさか。王族のアレクセイ様にそんな危険な事はさせられません!

けれど私が止めるよりも早く、アレクセイ様は真っ直ぐに脇道の方へと進んで行きます。私がもたもたしている間に女性は脇道に連れて行かれてしまった様です。女性の姿が見当たりません。

アレクセイ様は躊躇う事無く、脇道の奥へ進んで行きます。その背中が見えなくなると、私の固まってしまっていた体は漸く動き出し、慌ててアレクセイ様の後を追いました。



お兄様とリュシオンに決して入ってはいけないと言われていたので、脇道に入るのは初めてです。

建物の影になっているせいで表通りと比べると暗く奥の様子が伺えません。寒々しい雰囲気が漂っています。

不安が襲って着ましたが、アレクセイ様は予想していたより近く、脇道に入って直ぐの所に居ました。

どうやって助け出したのか、女性を背中に庇っていて、三人の男性と睨み合っていました。

緊張感が溢れる中、アレクセイ様が女性の耳元に顔を寄せました。何か言っている様ですが、私のところまでは、聞こえません。

その直後、身を翻した女性が勢い良く私の方へ突進して来ました。

「え?」

どうして私に突撃して来るのでしょう?

ぶつかると思い、身構えた私の私の横を、目を瞠る速度で素通りしてそのまま駆けて行きます。

ど、どういう事でしょうか?
慌てて振り返ると、女性の姿がどんどん小さくなって行きます。
誰か、助けを呼びに行ったのでしょうか?

後に残ったのはアレクセイ様と私だけになりました。

女性を逃してしまった事で怒ってしまった男性達の恨みの視線を受けて、私は背筋が冷たくなるのを感じました。
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