エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
トウジ様の目は、これ以上ないくらいの真剣さで私を見つめていた。
(『君にならすべてを打ち明けられる』……それってつまり、私が<グリーン>としてこの人の目にかなったってことよね)
すぐに頷きたいところだったけど、……その前に言っておいた方がいいことがあった。
「私をそんな風に評価してくださるのはありがたいです。
でもトウジ様、それは、ハルヒコ様にマジュ様が実の娘ではないことを思い出させる……ということですか?
私の力で、思い出すように彼の心に働きかけることはできると思います。
でも、たとえ本当のことを思い出しても、マジュ様が眠り続けている現実が目の前にあるままでは……」
ハルヒコ様は、「マジュの実父であれば」という後悔から記憶をねじまげた。
つまり、言い方は悪いけれど、「実父ではなかったせいで起こった悲劇」から逃げ出して、「実父だった、でも悲劇は起こった」とすることで、心の負担を軽くしたわけだ。
だから、その悲劇―――「目覚めないマジュ」という現実が変わらないかぎり、いくら記憶を正しても、彼は結局また現実から逃げ出していくだけではないだろうか。