溺愛〜ラビリンス〜

「翔真を誘って、久しぶりに俺達だけで走ったんだ。楽しい走りだったけど、帰りの山道で突然小動物が翔真のバイクの前に飛び出してきて、翔真は咄嗟に避けようとしてハンドルを切って、バイクごと転倒して…翔真はかなり激しく投げ出されてしまったんだ。すぐに俺達が声かけたりしたけど…一度も翔真の意識は戻らないで病院に運ばれた。最初の話しだと、頭には異常ないって事だったんだけど、事故で大量出血して、手術でもまたかなり出血した事で今の状態は予断を許さない状況だ。」


「ッツ…」


俺の話しを聞いた柚ちゃんは厳しい現実を突き付けられ、唇を噛んで泣きたいのを堪えているのが分かった。
柚ちゃんには酷な事だと思うけど、包み隠さず現実を知った上で自分がどうするべきかを決めてもらいたかったからありのままを教えた。


「柚ちゃん…翔真の所にはずっとおじさんとおばさんが付きっきりでいたんだ。おじさんはさっき帰ったけど、おばさんは翔真の状態から傍を離れたくないってそのまま付き添っている…かなりの心労だと思うから、これ以上の心労をかけないようにしてあげて。」


これからおばさんの所に行くにあたって、それだけは柚ちゃんに配慮してもらいたかった。だから酷かもしれないけど、注文をつけた。もし無理なら今は行かない方が良いと思った。




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