ツンデレ社長の甘い求愛
「もちろんしっかりと踏まえた上です! 契約させていただいた酪農家や加工工場とは密に連携をとっていますし、例え大きな自然災害が発生したとしても、迅速に対応いただけると思います。ですのでこの原材料価格は、なんら問題ございません」


開発部の人が言いたかったであろう事柄をスラスラ伝え終えるも、社長はなにも言わずジッと私を見つめたまま。


相変わらず鋭い眼光に顔が引きつりそうになるけれど、大丈夫。

私は間違ったことなどなにも言っていないのだから、堂々としているべき。

自分を奮い立たせ、真正面から社長の目力光線を受けていると、彼はフッと視線を逸らした。


「それならいい。この後、用事が入っているから失礼する」

「――え」

てっきりなにかしら言ってくると思っていた私は、すっかり拍子抜けしてしまった。

けれど時間が押しているのか、社長は腕時計で時間を確認した後、素早く立ち上がりあっという間に会議室から出て行ってしまった。


バタンとドアが閉まる音がし、完全に会議室が密室空間となった途端、開発部の人は緊張が解けたのか項垂れ、主任はというと魂が抜けたかのようにのけ反った。
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