好きになるまで待ってなんていられない
「お魚以外は何しましょうか?好きなものは?何かありますか?」
「んー、茶碗蒸し、…最近食ってない」
和食に飢えてるんですね。
「解りました。他には?」
「味噌汁と、何か野菜の和え物があるといいかな」
子供の為のメニューが優先するからかな。
「解りました。後はやります。社長は楽にしててください」
あ、…。ちょっと睨んで牽制しておいた。
「…解ってるって」
冷蔵庫から適当な野菜を取り出して調理した。
社長はいい子でテレビを観ていた。
あ、お茶はあるかな…。
熱い緑茶を入れて持って行った。
「はい、どうぞ。もう出来ますから。食器は…使ったら駄目なのってありますか?」
…。
「いや、どれを使っても大丈夫だ。必要な物は持ち出してるようだから」
「はい。では適当にします」
「うん」
…淡々と。余計な反応はしないでいてくれてるな。これが日常なら…。好きにならない訳が無い。
何が出来て何が出来ないかはどうでもいい。気配りをしてくれる事が、…はぁ、染みる…。
温かいお茶をこんな気分で飲むのも久し振りだ。…美味い。
「成美…」
「社長、煮付けの味見、して見てください」
「あ、はいはい…」
小さい皿に少しの魚の身と煮汁。
箸で摘んで口の前に持って来た。…馬鹿成美。無意識にし過ぎだ。
「はい、食べて見てください」
…。
パクッと食べた。
「大丈夫そうですか?」
「…ん、ああ」
…美味い。早くご飯も一緒に食べたい。
「もう、盛りつけますから。こっちに来ますか?」
「ああ」
味噌汁も、茶碗蒸しも並べてある。小松菜ともやしを胡麻で和えてある。
魚を盛った大皿を置く。
ご飯を渡された。
「良かったですね、美味しそうに炊けてますね、御飯」
…。
「そうだな」
浅漬けのような漬け物を出して、頂きましょうかと言う。
漬け物か…簡単に作ったんだな。エプロンの紐を解いて首から抜いた。
…成美。成美が欲しい。…欲しくて堪らない。
「ん?何です?あ、お茶、入れ直しますね」
「あ、ああ」