好きになるまで待ってなんていられない
−告白−


「…気持ちって、綺麗に清算しなくてもいいものですか?例えば、大人だから、…フリーだからって、好きだからって気持ちで、したくなって、してもいいんですか?」

…。

「…さあな、どうだろう。都合よく考えるなら、自分の物差しは、真っ直ぐで無くてもいい、と捉えるとか…。
曲げて計りたいなら曲げる。目盛りを飛ばしたいなら飛ばして計り、また計り直して、違う数字にしてみたり…。曲がっている事、数字が違う事を知っていても、自分が大丈夫で居られるか…。
平気な奴は平気だ。どんな物差しも持ってるし、自在に使いこなす。
間違いは間違いだと、ずっと囚われるような質なら、正しく計る物差し以外持ってはいけないんじゃないかな。…自分が潰れるから」

自由恋愛には、関わる互いを許し合うルールが必要だ。心のバランスが互いに違うなら、自由にしてはいけない。

「社長を利用してもいいんですか?」

…。

「構わないと言ったと思うが?俺はどんなお前も好きなんだ。揺れて苦しいなら、それなりにだ。…苦しいんだろ?」

だから一緒に居てはいけない。…もうずっと可笑しい。

「…苦しいです。社長の声を聞くと辛くなるんです。ついこの前まで、ずっと…平気だと思っていました。
だって…、仕事をしていても平気だし、もう、…社長との事は、ずっと昔の事だと思ってました。
だけど、社長が、離婚するなんて…今まで自分の事なんか話した事もなかったのに、内情を話し出して…。急にメールなんかも返して来たりするから…。返して来た事なんか無かったのに。
今までと違う事ばかりして…。
頭に残って、夢を見るんです。
夢の中で、今の社長が、あの頃のまま私を好きなように翻弄して、感触が凄くあって…名前も呼ぶんです。
灯、…灯って、何度も。現実と同じように声がはっきり聞こえるんです。
そんな夢を見てしまったら…。
夢から覚めると…身体が可笑しいんです。あんなに昔の事なのに、私の身体は社長を覚えているんです。
だから…ずっと可笑しいんです」
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