お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
「飲みすぎたの?やけに今夜は絡むね」
私は、聞きたくないといいつつも、どこかで奥さんとの現状を知りたいと思う気持ちもあるのだ。

「飲みすぎてなんかいないよ。聞きたかったの。ここの所やけに部屋が・・・その、生活感に溢れてきたというか」
「・・・余計なことだよ、それも。聞いてどうするの?それで一喜一憂するの?帰ってないと答えた方がいいの?」
「・・・ごめんなさい」

「僕こそごめん。僕の方が絡んでるね」しばし沈黙が流れる。
気まずくなり、ごちそうさま、と食べた食器を下げると「洗い物しておくから」先生は、キッチンでお皿を洗おうとした私を制止する。

ありがとうと言い、風に当たってくるとベランダに1人でた。

【聞いてどうするの?】確かに正論だ。
聞きたくないのに、本心は聞きたくて仕方がない。いや、聞いておきながら期待外れの答えであったなら、受け止める勇気はないのに、本当にどうかしてる。

背後から窓が開く音と先生の声がする。「今夜は月が綺麗だね。もう部屋に入ろう。風邪引くよ」

「もう少しだけここにいる。酔いを覚ましたいの」背後から髪を撫でられた。
「ほら、髪も冷たくなってるよ。まだ部屋に入らないなら、温めてあげるよ」

背後から抱き締められ、髪に優しくキスをしてくれる。せっかく会えたのに、時間をこんな風に無駄に使いたくない。私も暗い顔をするのはやめようと、微笑んだ。

笑ってる顔が好きだよ、今度は唇にキスをくれた。

「シャワーする?バスタブにお湯をはろうか」

この部屋のお風呂なのだけれど、ワンルームにしてはゆったりとしたお風呂で、私は気に入っているのだ。

「うん。お湯はってゆっくり入りたい」

温かなお湯で満たされたバスルームで、お互い服を脱がしっこする。

先生は脱衣所にオリーブオイルに、綿棒を持って入ってきた。

「?何?耳掃除?それともお臍のゴマでも取るの?」それを聞き、先生は大笑いする。

「ムードもへったくれもないな。今からここで君を料理するんだよ」

「え?本当に?」買い出しをしていた時の先生のあの言葉は、冗談だとばかり思っていた私は顔を赤らめた。








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