お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
先生に腕を強く掴まれ、ソファーベッドに押し倒される。

うつ伏せに寝かされ、後ろから先生を迎え入れさせられた。予想だにしていなかった急な事に悲鳴を上げた。激しく突かれるたびに、声をあげてしまう。涙が止まらない。

また仰向けに寝かされて、私の脚を高く大きく開いて、その上に先生は覆い被さるようにして入ってくる。

先生も泣いていた。何度も唇を重ねて、やがて二人してのぼりつめる。先生は私の口の中に注いでいく。

舌を伸ばして、一滴も残すまいと受け止める。嫌いなはずのあの匂いが口一杯に拡がる。

息をとめることなく、匂いも味をも受け止めて、喉の奥に流し込む。

この匂いが、味が私の愛する人のものだと思うと、それこそ愛しく思えてきた。

「・・・ごめん。この部屋は本当に匣(はこ)だ。ここの部屋で会う事が多くなってあまり外を出歩かなくなったよね。」
「ごめんね、先生。ごめんなさい、仕方ないのに」
「・・・年明けにならないと無理だけど、どこか行けたら泊まりがけで2人で行こうか」
そう言い、私の涙を拭って優しく髪にキスをする。

「うん・・・」それを言うのが精一杯だった。
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