お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~

記憶の中のフレグランス

別れの予兆はあったものの、

ああいう形で終わりを迎えるとは

思わなかった。

だから別れをすぐには実感出来なかった。

もうあの人は私のもとへとは

戻ってこないと痛感したのは

フレグランスの香りが私と

始まる前の香りに戻ったこと。

もう2度とあの人から

私の大好きなポロスポーツの香りが

することはなかった。

部所の移動で、私は先生と

顔を合わせる機会がほとんどなかった。

先生と時折、廊下ですれ違っても

挨拶をして、ただ通り過ぎるだけの

元の関係へと戻っていった。

私の鼻腔を掠める香りに恋ははじまり、

香りに終わったと言ってもいいだろう。

私はただ本当に愛していた。

夢はいつか醒めるもの。

それでも貧乳地味子は夢を見た。

限られた時間の中でも、

高嶺の王子様に愛されたいと。

夢は潰えたけれど、

決してバッドエンドではない。

今に繋がるための必要不可欠な

ステップなのだから。

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