ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
新幹線のホームには、私の両親が見送りに来てくれた。
中山建設の社長の計らいで、来週、会社が手掛けている再建中の神社の一角で結婚式を挙げさせてもらうことになっている。
なのでその時、両親にはまた会えると分かっているからか、そんなに寂しさは感じなかった。

それに、昨日、私を迎えに来てくれた光さんと一緒に、新幹線で青森に行くし。
もし私一人で新幹線に乗ってたら―――まぁ、双子ちゃんも一緒だけど―――それでも、寂しくておいおい泣いちゃったかもしれない。

旅をするなら一人より二人、二人より四人がいい。
それが人生の長旅なら、大好きな人たちと一緒の方が、断然いい。

「行くか」と言った光さんが、私に手を差し出した。

大きくてゴツゴツした、宮大工の手。
タコができてて、頼りがいがあって、優しく包み込んで・・・色々な魔法を生み出すことができる光さんの手。

あぁ、この人が私の旦那様でホント・・・幸せ。

最愛の旦那様を見上げた私は、彼と手をそっとつなぐと、「はい!」と元気よく返事をした。
そんな私に、光さんは、少しだけ口角を上げて微笑んでくれた。


ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 本編完


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