ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
私がササッと靴を脱いだのとほぼ同時に、望月さんがパッと靴を取った。

望月さんが「念のため、両方持ってくぞ」と言った頃には、すでに彼は歩き始めていたので、私は彼の背中に向かって「はい。おねがいしますー」と言うしかなかった。

・・・ハイヒール脱いじゃうと、あの人との身長差がますます大きくなっちゃったな。
なんて思いながら、大柄な望月さんに向かって2・3度手をふった私は、彼が見えなくなるまでそこにじーっと立っていた。

望月さんとは、彼がエレベーターに乗るときまで、視線が合うことはなかった。
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