Open Heart〜密やかに たおやかに〜

宮本くんとシュウちゃんが社長と会議室へ行った後で、フロア内はざわついていた。

「新プロジェクトから岡田課長を外すってどういうこと?」

「社長と課長、何かあったのかな?」

「いや、それにしても可哀想なのは、宮本縫製工場の宮本さんだよ。傘下に入る契約を急に破棄されたら、そりゃ困るだろ」

「裁判沙汰だよな」

「でも、金がないんだろ。少ない違約金で我慢させられるんじゃねーの?」

みんな言いたいことを言って、憶測でものを言っている。

「宮本さん、どうなるんだろ。可哀想だよ。課長、どうにかできないのかな? どうして、課長が急にプロジェクトを外されたんだろ?課長の肝いり企画でしょ?」
マキが心配そうにして私に話かけてきた。

シュウちゃんが新プロジェクトから担当を外されたのは、恐らく、私のせいだ。

シュウちゃんが私を選んだことが、もう社長の耳に入ったに違いない。

山田課長だけではなく、宮本くんにまで迷惑をかけることになるなんて……。

宮本くんがご両親からついだ大切な縫製工場だ。簡単には潰せない。
宮本くんの気持ちが痛いほど分かる。今まで一緒に会社を守ってきたみんなのことを路頭に迷うような真似はさせられない。



話し合いで社長の気が変わるだろうか。

自分がこうして巻き起こった事件の関係者でありながら何も出来ないことに腹が立っていた。


どうしたら、宮本くんを助けられるだろう。

今は、会議室で行なわれている話し合いを、ただ座って待つしかなかった。
< 124 / 132 >

この作品をシェア

pagetop