闇喰いに魔法のキス



****


チッ…チッ…チッ…


静かな酒場に時計の針の音だけが響く。


私は、一人カウンターに腰をかけて

ただ、窓の外と時計を交互に見つめていた。


レイとロディが出て行ってから一時間が
経過した。

壁の時計は午後六時を指している。



不安で、心が押しつぶされそう。



ふぅ、と、小さく息を吐いて考える。



…ギルの強さは、この目で見てきた。


でも、ギルとエンプティの力の強さは
ほぼ互角。

どちらかが倒れるまで、戦いは終わらない。


“ギル”は、“レイ”として戦いに行った。

今までとは違う。



…レイ、お願い…

早く帰ってきて………!



その時、酒場の外から物音が聞こえた。



!

まさか、レイ…?



私は、急いでカウンターから扉に駆け寄る。


バン!と扉を開けて外を見た瞬間

私の期待は一瞬で崩れ去った。



『いたぞ!シンを持つ女だ!』



そこには、ざっ、と二十人ほどの黒マントたちの姿があった。


とっさに扉を閉めようとするが、そのうちの一人に、ガッ!と扉を抑えられてしまう。



『おい!大人しくシンを渡せ!』


『ギルが来る前に女を連れ去るんだ!』



黒マントたちの言葉に、私は必死で恐怖心を押し込めて叫んだ。



「悪いけど、私の中にもうシンはないわ。シンの今の持ち主はレイよ!

分かったらさっさと帰って…!」



すると、それを聞いた黒マントたちはザワザワと話し始めた。


しかし、帰る様子はなく

ギラリ、と私に狙いを定めて口を開いた。



『シンがないのなら他の作戦に変更するまでだ。

ダウトの目的を達成する為にお前には人質としてこちらに来てもらう。』


『ギルの弱点のお前を手に入れたら、エンプティ様はギルからシンを奪いやすくなるからな…!』



!


う、嘘でしょう…?!



私の顔が、サァッ、と青ざめたと次の瞬間

黒マントの一人が私の腕を掴んだ。



!



「嫌!離して!!」


『大人しくしろ。抵抗しない方が身のためだぞ!』



レイは、エンプティと戦いに行ってる…。

ここには来れない…!



私は必死に扉にしがみついて抵抗するが

黒マントは私の腕を離そうとしない。


その時、黒マントの一人がしびれを切らしたように叫んだ。



『こうなったら、攻撃魔法で気絶させて連れて行くぞ。』



!!


私が、目を見開いた瞬間

黒マントたちの瞳が輝いた。



『ギルの弱点を捕らえろ!』



っ!


逃げられない…!



< 182 / 259 >

この作品をシェア

pagetop