闇喰いに魔法のキス



****


「ごちそうさまでした。」


朝ごはんを食べ終わり、お皿を持って席を立った私は、キッチンに入り、スポンジを手にした。


それを見たモートンが、私に声をかける。



「僕が洗いますから、ルミナさんは座っていていいですよ。」


「いえ…!泊まらせてもらってご飯までごちそうになったのに、何もしないなんて悪いです。

皿洗いは酒場でよくやりますし、慣れてますから。」



…そう。

レイに何度も仕事として頼まれて、今までこなしてきた。


何か手を動かしていないと、余計なことまで考えそうで…怖い。


モートンは、そんな私の心中を察したのか、小さく呼吸をして私を見つめた。



「わかりました。お願いします。

僕は研究室にいるので、何かあったら言ってください。」



「はい…!」



私がモートンの言葉に返事をした

その時だった。



…ドンドンドン!



ログハウスの玄関の扉を誰かが叩く音がした。



!



私は、モートンと共に玄関に向かい

丸太でできた扉を開ける。



するとそこには、漆黒の髪の青年が立っていた。



「…ロディ…!」



私が彼の名前を口にすると

ロディは私とモートンを交互に見ながら口を開いた。



「朝早くに悪いな。

レイのことで、話があるんだ。」



…どくん!


レイの名前を聞くだけで、心がぎゅっ、と締め付けられた。


ロディは、私を気遣うようにして話し始める。



「…昨日、レイと一晩中話してみたんだ。

だが、闇喰いのことやラドリーさんのことは覚えてるみたいでも、嬢ちゃんのことだけは思い出せなかった。」



…!



私が、微かに唇を結ぶと

ロディは、ばっ!と私の手を取って言った。



「嬢ちゃん。辛いかもしれないが、一緒に来てくれないか。

確かめたいことがあるんだ。」



!


“確かめたいこと”…?



私が目を見開くと、モートンが私の背中を、トン!と軽く押した。


驚いてモートンへと振り返ると

モートンは優しげな表情で私に言った。



「…行ってください。僕は、名もなき魔法の研究を続けます。

レイ君なら、きっとルミナさんの事を思い出すはずです。」



…!


モートン……。


ふいに泣きそうになった私に

モートンは私の顔を覗き込むようにして言葉を続けた。



「…でも、もし、本当に苦しくなった時は、またここに来てください。

僕が昨日レイ君から頼まれたのは、ルミナさんを守ることだけではありませんから。」



え……?


私が聞き返す間もなく、モートンは優しく私とロディに手を振ってログハウスの扉を閉めた。



…バタン。



視界に、丸太の扉が映る。



今のは、どういう意味…?



その時

私の手を取ったロディが、くいっ、と私を
軽く引っ張った。



「…行こう、嬢ちゃん。

また、ここに来る時は俺が連れてきてやるから。」



…っ!


私は、ロディの手を握り返し大きく頷いた。



そして、私たちは酒場にいる“レイ”の元へ向かうため

薄暗い樹海へと入って行ったのだった。


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