朝比奈さんの隣に並んだと言うのに、彼はあたしの手を離してくれなかった。

「あの、朝比奈さん…」

手を離してくれるようにと求めたものの、
「行こう」

朝比奈さんはあたしの手を引いたのだった。

どうしよう…。

こんな状況は初めてで、あたしはどうすればいいのかわからなかった。

こう言う場合はどうすればいい?

何をすればいいんだ?

どう対応すればいいんだ?

心臓がドキドキと早鐘を打ち始めた。

繋いでいるこの手から、心臓の音が伝わってしまったら大変だ。

落ち着け、落ち着け、落ち着け、あたし…。

いつもの自分を保ちなさい…。

パニックになっているこの状況を落ち着かせるために、あたしは何度も自分に言い聞かせた。
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