黄緑と青のチェック柄のストールを肩にかけながら、あたしはふと思った。

――朝比奈さんに本当に伝えなくてもよかったのだろうか?

あたしが目を覚ました時、彼はすでに家を出た後だった。

テーブルのうえには朝ご飯が用意されていたのはもちろんのこと、その隣に置き手紙があった。

『冷蔵庫の中に肉じゃがと小松菜のナムルが入っているので今日の夕飯はそれで済ませてください

ご飯は冷凍庫の中に入っているから解凍してから食べてね

みそ汁は今朝作ったのを温めていいから

何か困ったことやわからないことがあったら電話してね

小春ちゃんへ 欣一より』

「…本当にマメな人だよね」

置き手紙の内容を思い出したあたしは呟くと、息を吐いた。

自分が出張で、しかも朝早いにも関わらず、朝食と一緒にあたしの分の夕飯も作ったのだ。

そりゃ、そうか。

社員旅行に行くことを言っていないんだから。

「あっ、そろそろ行かなきゃ」

トートバックを手に持つと、更衣室を後にした。
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