箱庭センチメンタル



彼が私をよく見ている証拠、と言えば自惚れに近いけれど。


間違ってはいないと思う。



そんなに気張っていて疲れないのか、と。


そう思いはしたけれど、彼にとってはごく当たり前の習慣らしい。


それこそ、息をするのとなんら遜色ないのではと思ってしまうほどに。


もはや生活の一部になっているのを見ると、どこまでも良い人らしい。



見返りを求めない、無条件に優しい人。



そんな人はいない、いるわけがない。


目の当たりにしている今でもそう思うけれど、それでも……



特別な人はいるものだ。


そう納得できてしまうのが真也の魅力だろう。




人間とは自分が全て。


所詮、己の物差しでしか物事を図れない。


そうした基準で優劣をつけ、価値を見出す事しかできない卑しい生き物。


どんな物でも利用して、どんな者でも蹴落とす。


欲求を満たすためなら、手段をも厭わない。


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