箱庭センチメンタル
「雛李さん。あなたはそのまま続けなさい。わたくしが戻るまで、この部屋からは決して出ぬように。時間は取らせません」
「かしこまりました。お気を付けて行ってらっしゃいませ」
襖が閉まるまで見送ったのち、ゆっくりと顔を上げた。
頭の中で反芻させる。
私は、部屋から出てはいけない。
何があろうとも。
お祖母様の御心のままに。
胸に手を当て、確かめる。
心臓の鼓動が布越しに伝わってきて、精神の騒めきを知らせていた。
何を感じているわけでもないというのに、体は正直なのだろう。
自分をも完璧には誤魔化せはしないようだ。
感情の機微に聡いお祖母様のことだ。
例え私自身がそれを認知していなくとも、状態異常に気付かれる恐れは十二分にあった。
運が良かった、としか言いようはないだろう。