箱庭センチメンタル
突如として押し寄せる、身震い。
大げさな言い回しだけれど、命拾いした。
これ以上、余計な私情を増やすわけにはいかない。
今抱えているこれも、お祖母様が戻ってくるまでに鎮めなければ。
ぐ、と筆を握り和紙を見つめる。
さて、何を書こう。
目を閉じて、漢字一文字を思い浮かべる。
悩んでいても仕方がないだろう。
墨で筆をたっぷり湿らせて、軽く落とす。
さしあたり、直感で文字を書き出してみた。
……こんなものだろうか。
「なかなかの出来栄えですね」
自負できる程度には上手く書けていると思う。
お祖母様に目を通してもらうのも良いかもしれない。
先ほどまで騒めいていた胸の内はすっかり鳴りを潜めて、多少の余裕さえ生まれていた。
これなら心配はいらないだろう。