箱庭センチメンタル
おかしな点はないかと、部屋をさっと見回して確認した直後——。
パァンッ!とあり得ないほどの勢いで、縁とは別の襖を叩き開け入ってきた女中。
今日は本当に騒々しい。
後のお祖母様の怒りを想像するのは実に容易い。
何故、見ず知らずの者に手を貸す気になってしまったのかは私自身、分かりかねるけれど。
とにかく今はこの場を乗り切らなければ。
「どうかなさいましたか?」
「あのっ、こちらに不審な人物は来ませんでしたでしょうか!?」
「いいえ、誰もいらっしゃっておりませんが。なぜこちらに?」
「ああ、いえ……侵入者らしき人物がこちらへ逃亡したとの報告があったのですが…」
「どうやら誤報が出回っているようですね。後に来た者にも申し伝えましょう。
この場で暇を潰していても仕方ありません。他へ急くのが得策でしょうね」