箱庭センチメンタル
頑として首を振って見せる、彼女のもう一つの性質を私は思い出した。
確かに皐は、人の言う事を否定せず受け入れ、大きく出られない性質。
けれどそれは、無知であるがために物事の本質をよく理解できていないため。
つまりは、それらに対して、善悪の区別がついていないからだ。
前述の通り真っ直ぐな彼女は、自分の非を認めて人に従うことはあっても、何も考えず言いなりになることはない。
皐は控えめであっても、気弱ではない。
極端な話、理解さえできれば間違っていると思うことには意見できる意志の強さがあるのだ。
……厄介ですね。
こうなると説得には時間がかかりそうだ。
けれど手段がないわけではない。
時間はかけたくないからこそ、立ち去る兆しのない今の皐に使うのには最も効果的だろう手段が。
多少荒くはなるのだけれど、仕方がないのかもしれない。